特集 解説

営業現場の「属人化」をどう防ぐか ソニー生命・プルデンシャル生命・日本郵政グループの公表から読む管理態勢の点検項目

営業現場の「属人化」をどう防ぐか ソニー生命・プルデンシャル生命・日本郵政グループの公表から読む管理態勢の点検項目

ソニー生命、プルデンシャル生命、日本郵政グループが2026年9月に公表した資料から、営業社員による金銭詐取、退職者による顧客情報の持ち出し、営業評価・活動管理の見直しを整理。営業現場を担当者だけに閉じないために、保険会社・代理店が確認したい管理態勢の点検項目をまとめる。

目次
  1. ソニー生命 乗換えを名目に解約させ、返戻金を原資とする金銭を預かった事案も
  2. 保険業務以外の投資話や金銭の借入れも確認
  3. ソニー生命が問題視した「属人的かつ閉鎖的な関係」
  4. プルデンシャル生命 退職した元営業社員が顧客情報を持ち出したまま紛失
  5. 退職時に「会社の管理外へ残さない」仕組み
  6. 日本郵政グループ 販売数字だけでなく顧客との信頼関係構築も評価
  7. 活動記録を残し、管理者が確認できる仕組みに
  8. 3つの公表から考える「担当者だけに閉じない」管理
  9. 保険会社・代理店が確認したい8つの点検項目
  10. 「顧客との強い関係」を組織としてどう支えるか

ソニー生命、プルデンシャル生命、日本郵政グループが2026年9月に公表した資料から、営業社員による金銭詐取、退職者による顧客情報の持ち出し、営業評価・活動管理の見直しを整理。営業現場を担当者だけに閉じないために、保険会社・代理店が確認したい管理態勢の点検項目をまとめる。

営業担当者が顧客と長く関係を築くことは、保険販売における大きな強みの一つだ。

家族構成や資産状況、将来の希望まで理解した担当者が継続して対応することで、顧客に合った提案やアフターフォローにつながる。

一方で、その関係や顧客情報、営業活動の経緯が担当者個人に集中すると、会社や管理者から実態が見えにくくなる可能性がある。

2026年9月、ソニー生命保険、プルデンシャル生命保険、日本郵政グループが、それぞれ営業管理や顧客管理に関係する資料を公表した。

ソニー生命では、営業社員による金銭詐取などが複数確認され、同社自身が顧客と営業社員との「密室化」をリスクとして挙げた。

プルデンシャル生命では、退職した元営業社員が顧客情報を含む帳票類を社外に持ち出し、退職後に紛失していたことが判明した。

日本郵政、日本郵便、かんぽ生命保険の3社は、一時払終身保険等の販売に係る認可取得前の勧誘を受けた再発防止策として、営業評価、活動記録、モニタリングなどの見直しを示している。

これらは、同じ性質の問題・事案を扱ったものではない。

ただ、営業活動を特定の担当者だけに委ねず、会社が顧客との接点、営業活動の記録、顧客情報、評価プロセスをどこまで把握できているかという視点で見ると、保険会社や代理店が自社の管理態勢を点検する材料になる。


ソニー生命 乗換えを名目に解約させ、返戻金を原資とする金銭を預かった事案も

ソニー生命は2026年9月11日、営業社員(元営業社員を含む)と専属代理店「プレミア・エージェンシー」による金銭に係る不適切な行為を受けて進めている「お客さま確認」について、8月末時点の進捗を公表した。

確認対象となる顧客は約280万人。

このうち営業社員の担当顧客が約271万人、専属代理店の担当顧客が約9万人としている。

8月4日の公表以降、新たに確認された「保険業務に関連する金銭詐取」は元営業社員2人によるもので、被害にあった顧客は6人、被害額は約2,190万円だった。

それまでに公表していた事案を合わせると、累計では営業社員4人、顧客21人、約5,640万円となる。

「別の商品に入れ替える」と説明して解約を促したケース

新たに公表された事案の一つが、姫路ライフプランナーセンター第2支社に所属していた元営業社員によるものだ。

2023年4月から2024年11月にかけて、顧客に「別の商品に入れ替える」と騙ってソニー生命の保険契約の解約等を促し、支払われた解約返戻金の一部を原資とする金銭を預かり、私的に使用していた。

9月11日時点で確認されていた被害は顧客1人、約1,270万円。

同社は、同様の手法によって複数の顧客から金銭を詐取していた疑いがあるとして、引き続き調査している。

もう一つは、千葉ライフプランナーセンター第5支社に所属していた元営業社員による事案だ。

2021年6月から2023年10月にかけて、顧客との面談時などに、ソニー生命が取り扱っていない投資・運用を名目として金銭を預かっていた。

確認された被害は顧客5人、約920万円だった。



保険業務以外の投資話や金銭の借入れも確認

保険業務に直接関連しない不適切な金銭授受も確認されている。

投資話を持ち掛けて金銭を預かったり、顧客から金銭を借り受けたりした事案は、既公表分を含め、営業社員・元営業社員6人、顧客17人、約1億2,420万円。

このうち1人は、保険業務に関連する金銭詐取事案と同一人物だった。

専属代理店については金銭不祥事は確認されなかった一方、7つの専属代理店が、ソニー生命への事前の届け出をせずに、同社の取扱商品ではない投資商品やその取扱業者などを顧客へ紹介していた。

ソニー生命は4月24日の公表時点で専属代理店制度の廃止を決定しており、該当する代理店や募集人について引き続き厳正に対応するとしている。



ソニー生命が問題視した「属人的かつ閉鎖的な関係」

今回の公表で注目したいのは、個別事案だけではない。

ソニー生命は、営業活動や顧客対応が特定の営業社員だけに依存することで生じる「属人的かつ閉鎖的な関係」を重要なリスクとして認識している。

そのうえで、顧客と営業社員との「密室化」を防ぐため、本社と顧客との直接的かつ継続的な接点を拡大する方針を示した。

具体的には、今後の取組として、

  • すべての申込みについて、本社からも顧客に電話し、契約内容や顧客の意向、申込手続の適切性などを確認する

  • 複数の連絡手段を活用し、本社から顧客へ定期的に連絡するとともに注意喚起を強化する

  • 2024年11月から申込時に必須としている「権限明示」を、より分かりやすい形へ見直す

  • 手続のデジタル化を進め、担当者が案内できる商品・サービスや業務範囲を顧客が確認しやすくする

  • 動画を利用した手続を導入する

などを挙げている。

担当者による説明だけで手続を完結させず、会社自身が顧客の意向や申込みの内容を確認する。

担当者を経由せず、会社から直接顧客へ注意喚起する。

担当者に何ができ、何ができないのかを顧客自身が確認できるようにする。

こうした仕組みによって、顧客との関係や手続の経緯を営業社員一人だけに閉じない考え方だ。

ソニー生命はまた、金融庁から保険業法第129条第1項に基づく立入検査に係る通知を受けたことを明らかにしている。

全顧客を対象とした確認については、2026年11月末の完了を見込んでおり、次回の公表は12月中旬を目途としている。



プルデンシャル生命 退職した元営業社員が顧客情報を持ち出したまま紛失

プルデンシャル生命が9月14日に公表したのは、金銭ではなく顧客情報に関する事案だ。

2026年3月に多摩支社を退職した元営業社員が、在籍中に取得した顧客の個人情報を含む帳票類を社外へ持ち出し、退職後に紛失していた。

事案が判明したのは6月。

帳票類を拾得した人から同社に連絡があった。

調査の結果、元営業社員の私有スマートフォンの電話帳にも、私的な関係のない顧客の連絡先が残っていたことが確認された。

対象となった顧客は1,570人。

持ち出された情報には、

  • 氏名

  • 電話番号

  • 住所

  • 加入商品名

  • 証券番号

などが含まれていた。

同社の調査では、元営業社員は、退職後に後任の担当者から相談や照会を受けた際に正確に回答するため、帳票類を持ち出していたことが確認されたという。

9月11日時点で、情報の第三者による利用や二次被害は確認されていない。



退職時に「会社の管理外へ残さない」仕組み

プルデンシャル生命は再発防止策として、個人情報保護に関する教育・研修を見直す。

さらに2026年9月を目途として、退職予定者について個人情報の管理状況を確認する取組を強化し、退職時における書類等の返却・廃棄手続も見直すとしている。

この事案から実務上確認したいのは、担当者が退職するときに、顧客情報が会社の管理外へ残らない仕組みが機能しているかという点だ。

会社が管理するシステム上のデータだけではなく、紙の帳票や私物端末に保存された顧客の連絡先などについても確認が必要になる。

今回の事案では、後任担当者から相談や照会があった際に正確に回答する目的で情報を持ち出していたと同社は説明している。

こうした目的であっても、退職後に顧客情報が会社の管理外に残る状態を防ぐ必要がある。



日本郵政グループ 販売数字だけでなく顧客との信頼関係構築も評価

日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社が9月24日に公表した資料は、前の2社とは性質が異なる。

一時払終身保険等の販売に係る認可取得前の勧誘をめぐり、3社が金融庁から2026年4月23日に受けた報告徴求命令と、日本郵政・日本郵便が総務省から5月1日に受けた報告徴求命令に基づき、再発防止策と実施状況を報告したものだ。

その中には、営業現場の評価方法や活動管理を見直す取組も含まれている。

グループは評価について、特定商品の営業結果、すなわち販売数字に偏ることなく、顧客との信頼関係構築につながる活動と合わせて総合的に評価する考え方を示した。

日本郵便は2025年4月、「お客さまとの良好な信頼関係構築」を重視する評価基準へ見直している。

さらに、

「お客さまとの良好な信頼関係構築」

と

「お客さまの商品・サービスのご利用」

の両面を評価する仕組みを2026年度から導入するとしている。

かんぽ生命も、アフターフォローや新契約など複数項目で構成する総合ポイントによって評価するとともに、新たに「お客さま満足度」を評価指標として設けた。

評価制度は、営業現場に対して組織が何を重視しているのかを示す仕組みの一つでもある。

今回、日本郵便とかんぽ生命はいずれも、販売結果だけではなく、顧客との関係構築やアフターフォローなどを含めて評価する方向を明確にしている。



活動記録を残し、管理者が確認できる仕組みに

日本郵政グループの資料では、営業活動の記録についても見直しが示されている。

日々の活動記録について、記載すべき事項や範囲を明示する。

さらに、活動記録システムの利便性を改善し、管理者による活動管理を改善する。

本社や支社によるモニタリングも強化する。

営業活動を記録する仕組みがあっても、その内容を管理者が確認できなければ、管理機能として十分に働かない可能性がある。

何を記録するのか。

誰が確認するのか。

確認した結果、必要に応じてどのように指導や追加確認につなげるのか。

活動記録と管理プロセスを一体で考える必要がある。



3つの公表から考える「担当者だけに閉じない」管理

今回の3つの公表は、同じ性質の問題・事案を扱ったものではない。

ソニー生命は金銭に係る不適切な行為。

プルデンシャル生命は顧客情報の管理。

日本郵政グループは認可取得前勧誘を受けた営業管理や評価制度などの見直しである。

したがって、一つの共通原因によって説明することは適切ではない。

それでも、保険会社や代理店の管理態勢という観点から並べると、一つの確認ポイントが浮かぶ。

顧客と担当者との間で行われていることを、担当者以外がどこまで確認できる仕組みになっているか。

契約内容。

顧客の意向。

金銭の授受。

取扱商品以外の紹介。

顧客情報。

日々の営業活動。

退職時の情報管理。

営業評価。

こうした情報や判断の経緯が営業担当者個人に集中すると、会社や管理者が問題を把握するまでに時間を要する可能性がある。

重要なのは、営業担当者を一律に疑うことではない。

一人の担当者だけに顧客との関係、情報、判断を集中させず、組織として顧客との接点と確認経路を持っているかということだ。



保険会社・代理店が確認したい8つの点検項目

今回公表された各社の対策や事案をもとに、保険会社や代理店が自社の管理態勢を考える際の点検項目を整理すると、次のようになる。

以下は、各社が公表した再発防止策や法令上の義務をそのまま列挙したものではない。各社の公表内容を踏まえ、INSURANCE JOURNALが実務上の確認ポイントとして整理したものである。


1.担当者以外が申込みの内容を確認できるか

申込み後に、担当者以外の部署や本社などから顧客へ直接連絡し、

  • どの商品を申し込んだのか

  • どのような意向に基づいて手続をしたのか

  • 手続の過程に不自然な点がなかったか

などを確認する経路があるか。

すべての契約について同じ確認が必要という意味ではない。

自社の商品特性、販売方法、リスクなどに応じて、担当者以外による確認をどの場面で行うかを考える必要がある。


2.会社から顧客へ直接連絡できるか

顧客との連絡をすべて担当者だけに任せていないか。

契約後も会社や代理店として顧客へ直接連絡し、

  • 担当者個人との金銭授受に注意する

  • 会社が指定する正規の方法以外で担当者等に金銭を渡さない

  • 取扱商品以外の投資話などを持ち掛けられた場合の相談先を伝える

といった注意喚起を行えるか。

ソニー生命も今回、本社から顧客へ直接、継続的に連絡する方針を示している。


3.解約を伴う乗換えを担当者以外が確認できるか

「別の商品に入れ替える」「別の商品へ乗り換える」などの説明を伴って既契約を解約する場合、解約理由や手続の経緯に不自然な点がないかを担当者以外が確認できる仕組みがあるか。

特に、高額な解約返戻金が発生する契約などについては、どのような確認プロセスを設けるかを検討する余地がある。


4.担当者の「できること・できないこと」を顧客が分かるか

担当者が取り扱える商品やサービス、業務の範囲を顧客自身が確認できるか。

担当者から紹介されたという理由だけで、顧客が「会社の正式な商品・サービスである」と受け取ってしまう余地がないかも確認したい。


5.取扱商品以外の紹介を把握できているか

募集人が、自社で取り扱っていない投資商品、金融商品、事業者などを顧客へ紹介する場合の社内ルールが明確になっているか。

事前届出や承認を求めている場合、その制度が実際に機能し、会社側で実態を把握できる状態になっているか。


6.退職時に顧客情報が会社の管理外に残っていないことを確認できるか

退職予定者について、

  • 紙の帳票

  • 顧客リスト

  • 営業資料

  • 個人的に作成したメモ

  • 私物端末に保存された顧客連絡先

など、会社の管理外に顧客情報が残っていないことを確認できるか。

書類の返却や廃棄についてルールを定めるだけでなく、退職時にどのように確認するのかまで決めておく必要がある。


7.評価制度が販売結果だけに偏っていないか

販売件数、保険料、新契約などの結果だけでなく、

  • アフターフォロー

  • 顧客との継続的な接点

  • 顧客満足

  • 適切な募集プロセス

などをどのように評価するか。

評価制度を通じて、組織が営業担当者にどのような行動を求めているのかが明確になっているかを確認したい。


8.活動記録を管理者が実際に確認できているか

営業活動について何を記録すべきかが具体的に定められているか。

さらに、その記録を管理者が確認し、

「なぜこの契約を提案したのか」

「なぜ解約に至ったのか」

「通常とは異なる対応はなかったか」

など、必要に応じて担当者への確認や指導につなげられる仕組みになっているか。

活動記録は、残すこと自体が目的ではない。

その記録を管理に生かせる状態になっているかが重要になる。



「顧客との強い関係」を組織としてどう支えるか

営業担当者と顧客の信頼関係そのものは、保険募集にとって重要な要素だ。

生命保険のように契約期間が長く、顧客の生活や家計に長期間関わる商品では、継続的な関係が顧客サービスにつながる場面も多い。

一方で、

担当者だけが経緯を知っている。

担当者にしか連絡できない。

担当者以外には顧客とのやり取りが分からない。

担当者が退職すると情報が途切れる。

そうした状態になっていないかは、管理態勢の観点から確認しておく必要がある。

ソニー生命が今回示した「密室化」の防止策は、会社自身が顧客との直接的な接点を増やそうとするものだ。

プルデンシャル生命の事案からは、担当者が退職するときに、顧客情報が会社の管理外へ残らないための確認プロセスの重要性が読み取れる。

日本郵政グループの再発防止策では、営業現場への働き掛けを、研修や指示だけではなく、評価制度、活動記録、管理者による確認、本社・支社によるモニタリングまで含めて見直している。

募集管理を考える際、確認したいのは、不適切な行為がすでに起きているかどうかだけではない。

営業担当者一人に、顧客との関係、情報、手続の経緯が集中していないか。

そして、担当者以外が必要なときにその内容を確認できる仕組みがあるか。

今回の各社の公表は、保険会社や代理店が自社の営業管理・募集管理態勢を改めて点検する材料の一つとなる。




参考資料

本記事はINSURANCE JOURNAL編集部による解説・分析です。制度・商品の詳細は公式発表をご確認ください。

関連記事