業界動向 解説

外貨建一時払保険、運用評価0%以上の顧客割合は84.7% 金融庁KPIから読む「為替」と販売後フォロー

外貨建一時払保険、運用評価0%以上の顧客割合は84.7% 金融庁KPIから読む「為替」と販売後フォロー

金融庁が2026年3月末基準の外貨建保険の共通KPIを公表。外貨建一時払保険で運用評価率0%以上となった顧客割合は、報告140者の単純平均で84.7%だった。前年の65.0%から上昇した背景と、数字を読む際の注意点、募集・販売後フォローへの示唆を整理する。

目次
  1. 65.0%から84.7%へ 各業態で0%以上の割合が上昇
  2. KPIの対象は「外貨建保険全般」ではない
  3. 「運用評価率」は、何を計算しているのか
  4. 円安方向の為替変動は、円換算の評価を押し上げる要因になり得る
  5. 「84.7%が0%以上」だから商品が優れている、とは言えない
  6. 「銘柄別コスト・リターン」は、別のKPI
  7. 金融機関ごとの数字を「ランキング」として扱わない
  8. 最新の保険モニタリングでも「販売後」が論点に
  9. 評価が上がった局面にも、フォローすべき理由がある
  10. 募集現場で「84.7%」をどう扱うか
  11. 管理者が確認したい5つのポイント
  12. 84.7%を「成績表」として見るだけでは足りない

金融庁が2026年3月末基準の外貨建保険の共通KPIを公表。外貨建一時払保険で運用評価率0%以上となった顧客割合は、報告140者の単純平均で84.7%だった。前年の65.0%から上昇した背景と、数字を読む際の注意点、募集・販売後フォローへの示唆を整理する。


外貨建一時払保険について、2026年3月末時点で運用評価率が0%以上となった顧客割合は、金融事業者140者の単純平均で**84.7%**となった。

金融庁が9月18日に公表した「外貨建保険の共通KPIに関する分析」で明らかにした。2025年3月末基準では155者平均で65.0%だったため、今回の集計では0%以上となった顧客割合が大きく上昇した。金融庁は、この変化について「為替水準の変動等の影響」を挙げている。

ただし、この「84.7%」を、**「外貨建保険を購入した人の84.7%が利益を得ている」**と読み替えることはできない。

対象となる商品、顧客、契約には一定の条件があり、数字自体も全国の契約者数を合算して算出した割合ではない。また、基準日時点の解約返戻金などを円換算して評価するため、為替や金利の状況によって結果は動く。

外貨建保険を扱う募集人や管理者にとって重要なのは、「84.7%」という結果だけではなく、何を測った数字なのかを理解したうえで顧客に説明できるかである。



65.0%から84.7%へ 各業態で0%以上の割合が上昇

金融庁の集計によると、運用評価率0%以上の顧客割合は次のようになった。

業態2025年3月末2026年3月末
主要行等68.5%88.7%
地域銀行64.5%84.1%
協同組織金融機関等65.2%88.7%
証券会社62.1%79.3%
その他72.9%82.8%
全事業者65.0%84.7%

2026年3月末では、主要行等と協同組織金融機関等が88.7%、地域銀行が84.1%、証券会社が79.3%となっている。金融庁は、業態別に見てもおおむね8~9割が0%以上だったとしている。

もっとも、前年比較には注意が必要だ。

2025年3月末基準の集計対象は155者、2026年3月末基準は140者であり、同じ140者だけを追跡したものではない。また、金融庁が公表している84.7%は、各金融事業者が公表・報告した「運用評価率0%以上の顧客割合」を単純平均した数字である。国内の外貨建一時払保険契約をすべて集計し、全顧客の84.7%が0%以上だったという意味ではない。

金融事業者ごとの販売時期や取扱商品、顧客構成も異なる。65.0%から84.7%への上昇は市場環境の変化を考えるうえで重要だが、同一顧客集団の成績が19.7ポイント改善したと捉えるのは適切ではない。



KPIの対象は「外貨建保険全般」ではない

もう一つ押さえておきたいのが、共通KPIの対象範囲だ。

金融庁が定める「運用評価別顧客比率」の対象顧客は、基準日時点で外貨建一時払保険を契約している個人顧客である。

対象商品についても、すべての外貨建保険を含むわけではない。

金融庁の定義では、

  • 外貨建医療保険
  • 外貨建平準払保険
  • 介護保障や特定疾病保障など、生前給付の保障が組み込まれている商品

は対象から除かれている。

さらに、基準日時点ですでに解約している契約や、年金の支払いが始まっている年金契約も対象外となる。

したがって、84.7%という数字は、

「これまで外貨建保険を購入した人全体のうち、84.7%がプラス」

を示しているものではない。

2026年3月末時点で、共通KPIの対象となる外貨建一時払保険を保有している個人顧客について、各販売会社が算出した結果を集計したものと理解する必要がある。

また、顧客が複数の対象契約を持っている場合の名寄せは不要とされている。つまり、一人の顧客が複数契約を持つ場合、それぞれが別の顧客として扱われることもある。

こうした定義を知らずに「契約者の84.7%がプラス」とだけ説明すると、実態よりも広い意味に受け取られるおそれがある。



「運用評価率」は、何を計算しているのか

では、運用評価率はどのように算出されるのか。

金融庁の定義では、基準日時点の解約返戻金と既支払金額から、契約時の一時払保険料を差し引き、契約時の一時払保険料で割って求める。金額はいずれも円換算する。

簡略化すると、

(基準日時点の解約返戻金+既支払金-契約時の一時払保険料)÷契約時の一時払保険料

である。

例えば、契約時に1,000万円を一時払保険料として払い込み、基準日時点の解約返戻金と既支払金の合計が円換算で1,100万円なら、運用評価率はプラスになる。

900万円ならマイナスになる。

ここで重要なのは、実際に解約した顧客だけを集計しているわけではないことだ。

基準日時点で契約を保有している顧客について、「その時点の解約返戻金」を用いて計算する。

外貨建保険は一般に長期保有を前提とする商品であり、金融庁も、特に契約後の早い段階で解約した場合には、解約控除などにより解約返戻金が一時払保険料を下回る場合が多いと注意を促している。

また、基準日時点の解約返戻金は為替レートで円換算される。このため、満期まで保有した場合や、外貨のまま受け取る場合の評価とは異なる。

「84.7%」は、契約の最終的な運用成果を確定した数字ではない。



円安方向の為替変動は、円換算の評価を押し上げる要因になり得る

今回の数字を考えるうえで、為替の影響は大きい。

外貨建一時払保険では、外貨ベースの解約返戻金などが同じでも、円に換算するときの為替水準によって評価額が変わる。

例えば、同じ1ドルでも、1ドル120円で換算する場合と150円で換算する場合では円貨額が異なる。契約時より円安方向に動けば、円換算した評価額を押し上げる要因になる。反対に、円高方向への変動は評価額を押し下げる要因となり得る。

金融庁も、2026年3月末の運用評価率0%以上の割合が8割強まで上昇した背景について、為替水準の変動等の影響を挙げている。

ただし、評価額は為替だけで決まるわけではない。

対象契約によっては、金利変動による**市場価格調整(MVA)**が解約返戻金に反映される。金融庁の共通KPIでも、時価評価を行うため、MVAを反映して解約返戻金を算出することになっている。

したがって、

「円安になったから84.7%まで上昇した」

と単一の要因に置き換えるのも正確ではない。

あくまで為替水準など複数の要素が、基準日時点の評価に反映された結果である。



「84.7%が0%以上」だから商品が優れている、とは言えない

共通KPIには、もう一つ重要な限界がある。

外貨建保険は、金融商品としての運用機能だけでなく、死亡保障などの保険機能を持つ。

しかし、運用評価別顧客比率には、その保障機能の価値は反映されない。

金融庁は共通KPIを導入した当初から、保険は投資信託と異なり保障機能を有しており、その価値がKPIのリターンには反映されていないため、この指標だけをもって投資信託と単純比較することは必ずしも適切ではないとしている。

同じ理由で、

「84.7%が0%以上だから、外貨建一時払保険は成績の良い商品だ」

と結論付けることもできない。

逆に、基準日時点で運用評価がマイナスになっている契約だからといって、それだけで募集が不適切だったと判断することもできない。

契約目的が死亡保障なのか、相続への備えなのか、資産の通貨分散なのか。契約期間や顧客の資産状況、リスク許容度なども含めて考える必要がある。

KPIは販売会社の取組状況などを比較するための一つの材料であって、個別契約の適否を判定する指標ではない。



「銘柄別コスト・リターン」は、別のKPI

金融庁は今回、運用評価別顧客比率だけでなく、「銘柄別コスト・リターン」についても分析している。

こちらについて金融庁は、為替水準の変動等によって運用評価額が増加したことなどから、2025年3月末と比べてリターンは上昇し、コストはわずかに低下したとしている。

ただし、この「リターン」と、先ほどの84.7%は別の指標だ。

銘柄別コスト・リターンは、原則として基準日時点で5年以上保有している契約を対象に、各銘柄の平均コストと平均リターンを算出する。2026年3月末の全体平均の集計対象は137者だった。

また、ここでいうコストは、保険会社が販売代理店に支払う新契約手数料や継続手数料を基に算出している。顧客が直接支払った費用をそのまま示しているわけではない。

「運用評価別顧客比率」と「銘柄別コスト・リターン」を混同しないことも、KPIを読むうえでは重要になる。



金融機関ごとの数字を「ランキング」として扱わない

金融庁の資料には、各金融事業者の運用評価別顧客比率も掲載されている。

当然ながら、運用評価率0%以上の顧客割合には会社ごとの差がある。

しかし、その数字だけを並べて、

「A銀行の方がB銀行より優れている」

と評価することは難しい。

販売した商品の通貨、販売時期、契約期間、顧客層、取扱商品などが異なるためだ。

特に為替の影響を受ける商品では、どの時期にどの通貨の商品を多く販売したかによっても、基準日時点の円換算評価は変わり得る。

金融庁の共通KPIは、金融事業者の取組みを比較・検討するための情報を提供することを目的としているが、一つのKPIだけで販売会社の良し悪しを決めるものではない。

INSURANCE JOURNALとしても、金融機関別の数値を単純な順位表として紹介するより、なぜ差が生じるのかを見る材料として扱うべきだろう。



最新の保険モニタリングでも「販売後」が論点に

今回のKPIを見るうえで併せて確認しておきたいのが、金融庁が8月6日に公表した「2026年 保険モニタリングレポート」だ。

金融庁によると、銀行などの金融機関代理店を中心とした外貨建保険の販売量は、為替・金利環境の影響などから2023年度以降、減少傾向にある。苦情発生率も低位で推移している一方、他の保険商品と比較すると依然として高い水準にあるとしている。

2025事務年度には、外貨建保険の販売量が多い生命保険会社を対象に、苦情発生状況、適合性確認、高齢者募集ルール、重要情報シート、アフターフォローなどについてモニタリングを行った。

その中では、生命保険会社と代理店の営業部門だけでなく、第1.5線や第2線も含めた個別対話を行う会社が増えていることや、代理店に対して苦情の未然防止に関する情報を提供する取組みなどが確認されている。

アフターフォローについても、ターゲット型保険の目標値到達前のフォローに使う情報やツールを代理店へ提供し、その活用状況を確認して追加のフォローを促すなど、各社の取組みが報告されている。代理店との手数料規程を見直し、アフターフォローを役務として明確化した生命保険会社もあるという。

つまり、金融庁が見ているのは、契約時にリスクを説明したかどうかだけではない。

販売後、市場環境や契約状況が変化する中で、顧客に必要な情報を届けられているか。

そこまで含めて募集管理を確認する方向が鮮明になっている。



評価が上がった局面にも、フォローすべき理由がある

アフターフォローというと、評価額が下がった顧客への説明を思い浮かべやすい。

しかし、今回のように0%以上の顧客割合が大きく増えた局面にも、別の課題がある。

例えば、外貨建一時払保険を保有している顧客から、

「今なら利益が出ているので解約した方がいいか」

「円安のうちに円に戻した方がいいのか」

「目標値に近づいているが、次はどうすればいいか」

といった相談が入ることが考えられる。

そのとき、

「今はプラスになっています」

だけでは、顧客が判断するための情報として十分とは言いにくい。

確認したいのは、その契約の現在地だ。

  • 現在の解約返戻金はいくらか
  • 外貨ベースではいくらか
  • 円換算するといくらか
  • 契約時と現在の為替水準はどう違うか
  • 市場価格調整はどう影響しているか
  • 解約控除などはあるか
  • 解約すると保障はどうなるか
  • 顧客はその資金をいつ、何に使う予定なのか

といった点を整理したうえで、顧客自身が判断できるようにする必要がある。

反対に、評価がマイナスだからといって、

「今解約すると損なので、そのまま持っておくべきです」

と一律に案内することも適切ではない。

長期保有を前提とする商品であっても、顧客の資金需要や保障ニーズ、リスク許容度が契約時から変わっている場合がある。

評価のプラス・マイナスは、判断材料の一つであって、結論そのものではない。



募集現場で「84.7%」をどう扱うか

顧客から、

「外貨建保険で評価がプラスの人が増えたと聞いた」

と質問された場合を考えてみる。

その際には、例えば次のように説明できる。

「金融庁が公表した2026年3月末基準の共通KPIでは、報告した140の金融事業者について、運用評価率が0%以上となった顧客割合の単純平均が84.7%でした。ただ、これは外貨建一時払保険のうち一定の対象商品について、3月末時点の解約返戻金などを円換算して評価した数字です。為替や金利の影響も受けますので、個別の契約については現在の解約返戻金や保障内容を確認する必要があります。」

数字を否定する必要はない。

一方で、その数字を使って、

「今は外貨建保険が好調です」

「8割以上の人が利益を出しています」

「今後も同じような成果が期待できます」

といった説明につなげるのは避けたい。

共通KPIは、将来の運用結果を予測する数字ではないからだ。



管理者が確認したい5つのポイント

今回のKPIと最新の保険モニタリングを踏まえると、外貨建保険を取り扱う代理店や販売会社では、次のような項目を確認しておきたい。

確認事項見ておきたいポイント
KPIの使い方84.7%を商品の販売実績・将来予測のように説明していないか
契約後の情報提供評価額や市場環境が大きく変化した顧客に、必要な情報を確認できる手段があるか
解約相談円換算額だけでなく、MVA、解約控除、保障消滅なども確認しているか
目標値到達型商品目標到達や解約をきっかけに、次の商品への乗換えを前提とした案内になっていないか
管理・検証苦情、短期解約、乗換契約、アフターフォロー状況を継続的に確認しているか

※金融庁資料を踏まえ、編集部が実務上の確認事項として整理したもの。金融庁が示した統一チェックリストではない。

募集人に数字を説明させるだけではなく、管理者が「どのような場面でKPIを使っているか」まで確認することが重要になる。



84.7%を「成績表」として見るだけでは足りない

2026年3月末基準で、外貨建一時払保険の運用評価率が0%以上となった顧客割合は、報告140者の単純平均で84.7%となった。

前年の65.0%から大きく上昇しており、外貨建一時払保険の足元を考えるうえで注目すべき数字である。

一方、その対象は基準日時点で対象商品を保有している個人顧客に限られ、解約済み契約などは含まれない。評価額も、基準日時点の解約返戻金などを円換算して算出するため、為替や金利などの影響を受ける。

84.7%という数字は、外貨建一時払保険の「成績表」ではない。

むしろ募集現場にとっては、評価が大きく動く商品だからこそ、契約後の顧客に何を説明し、どのように判断を支えるかを改めて確認する材料と見る方がよい。

金融庁も最新の保険モニタリングで、アフターフォローの高度化や、代理店との対話・管理態勢を引き続き確認している。

販売時に為替リスクを説明して終わるのではなく、円換算評価が上がったときも下がったときも、顧客が自分の契約の現在地を理解できるようにする。

今回のKPIは、そのための一つの材料として読む必要がある。





主な参照資料

金融庁「金融事業者リスト(令和8年9月18日公表)、投資信託・外貨建保険の共通KPIに関する分析結果(令和8年3月末基準)」 金融庁

金融庁「外貨建保険の共通KPIに関する分析<2026年3月末基準>」 金融庁

金融庁「外貨建保険の販売会社における比較可能な共通KPIの定義」 金融庁

金融庁「2026年 保険モニタリングレポート」 金融庁

※本記事は2026年9月28日時点の金融庁公表資料に基づく一般的な解説です。個別契約の解約返戻金、為替手数料、解約控除、市場価格調整、保障内容等は商品・契約によって異なります。顧客への案内に当たっては、当該契約の商品資料、約款、契約内容および最新の解約返戻金等を確認してください。

本記事はINSURANCE JOURNAL編集部による解説・分析です。制度・商品の詳細は公式発表をご確認ください。

関連記事