ロ方式への見直しで実務はどう変わる?代理店の対応チェックリスト20項目
比較推奨販売をめぐる制度見直しについて、自社の何をどう変えればいいのか、具体的にイメージできている代理店は多くありません。本稿では、業界で「ロ方式」と呼ばれる考え方の基本を押さえたうえで、面談・意向把握・比較推奨・記録・教育・点検・システムという7つの実務領域ごとに、確認しておき…
比較推奨販売をめぐる制度見直しについて、自社の何をどう変えればいいのか、具体的にイメージできている代理店は多くありません。本稿では、業界で「ロ方式」と呼ばれる考え方の基本を押さえたうえで、面談・意向把握・比較推奨・記録・教育・点検・システムという7つの実務領域ごとに、確認しておきたいポイントを整理し、自己点検に使えるチェックリスト20項目をまとめました。各項目には、法令・監督指針上の確認事項なのか、社内管理上の推奨事項なのか、効率化の選択肢なのかを区分するタグを付けています。
本稿の位置づけについて
比較推奨販売に関する施行規則・監督指針の改正内容について、金融庁は2026年3月30日時点で「別途公表する予定」としており、本稿執筆時点(2026年7月24日)で確認できる公表資料からは、確定的な内容を断定できません。本稿は、現時点で公表されている情報と、従来から求められている意向把握・情報提供に関する規定にもとづく実務上の考え方を整理したものであり、「制度が確定・施行された」ことを前提とする記述ではありません。最終的な規定内容は、必ず金融庁および所属保険会社等の最新公表資料でご確認ください。
ロ方式とは
ロ方式とは、乗合代理店における比較推奨販売の類型を説明する際に業界で用いられている通称です。法令上の正式名称ではなく、保険業法施行規則第227条の2第3項第4号ロの規定を指す実務上の呼び方として使われています。顧客の意向を把握し、その意向に沿って、比較可能な同種の保険契約の中から商品を選別・推奨する方法を指します。
ハ方式との違い
従来の規定には、客観的な商品基準によらず、代理店の経営方針や取扱方針などを理由として、特定の商品を提示・推奨する場合の説明類型が設けられていました。この方法は、業界で一般に「ハ方式」と呼ばれてきました。従来は、保険会社との取引関係や代理店の取扱方針などを推奨理由として説明する類型が規定上存在していましたが、この場合も、顧客の意向把握や意向確認が不要だったわけではありません。比較推奨販売をめぐる制度見直しでは、顧客が重視する事項を把握し、その意向に沿って商品を選別・推奨することが、より明確に求められる方向にあります。
| 従来のハ方式と呼ばれる類型 | 顧客意向に沿った選別・推奨(いわゆるロ方式) | |
|---|---|---|
| 推奨理由の考え方 | 代理店の経営方針や取扱方針などを理由として説明する類型が存在 | 顧客が重視する事項を把握し、その意向に沿って商品を選別・推奨 |
| 意向把握 | 不要だったわけではない | 顧客意向と商品選定の関係がより重要になる |
| 記録・管理 | 従来から説明内容や意向把握との整合性を管理する必要がある | 比較推奨販売の実施状況を事後的に確認・検証できる運用がより重要になる |
ハ方式・ロ方式という呼び方の背景をより詳しく知りたい方は、関連記事「ハ方式とは?ロ方式との違いをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください(同記事も本稿と同様、断定的な表現の見直しを予定しています)。
実務は何が変わるか
比較推奨販売に関する制度見直しに対応するには、比較推奨理由の説明だけでなく、意向把握、記録、教育、点検など、募集管理の一連の運用を確認する必要があります。7つの実務領域に分けて、確認しておきたいポイントを整理します。
面談
面談では、商品を先に提示してその商品に意向を合わせるのではなく、まず顧客がどのような保障・補償や条件を重視しているのかを確認し、その内容を踏まえて商品を提示することが重要です。これは制度見直しによって新たに求められることではなく、意向把握義務(保険業法第294条の2)にもとづき、従来から求められている考え方です。
意向把握
顧客の当初の意向を把握するとともに、商品説明などを通じて意向が変化した場合には、その経緯を確認し、最終的な意向と契約内容が合致していることを顧客が確認できるようにする必要があります。顧客が「お任せします」と回答した場合でも、その言葉だけで意向把握を終えるのではなく、保障・補償内容、保険料、保険期間などの選択肢を示しながら、顧客が重視する事項を具体化することが重要です。
比較推奨
比較推奨理由を分かりやすく説明・記録するには、「①顧客が重視した事項」「②比較・選別の対象とした商品の範囲」「③その商品を提案した理由」の3点を整理する方法が実務上有効です。これは法令で指定された必須の書式ではなく、あくまで整理の一例です。トークスクリプトや提案資料が、顧客の意向を起点に商品を選別・推奨し、その理由を説明できる構成になっているか、確認しておく価値があります。
記録
比較推奨販売の実施状況を事後的に確認・検証できるよう、顧客の意向、比較・選別した範囲、推奨理由などを記録として残す運用が重要になります。具体的な記録項目や保存方法については、最終的な規則・監督指針、所属保険会社のルールおよび代理店の社内規則を確認する必要があります。記録媒体はシステムに限られるものではなく、紙や表計算ソフトによる運用も考えられますが、記録の抜け漏れ、更新履歴、検索性、点検のしやすさを含め、自社の管理態勢として実効性があるかを確認することが求められます。
教育
経験年数にかかわらず、従来の説明方法や営業トークが慣行として定着している場合があるため、実際の面談を想定した確認が必要です。顧客の意向と結びつかない推奨理由や、代理店側の事情だけによる説明例を教材化し、見直しが必要な表現を周知することが有効です。
点検
意向が不明確なまま推奨理由だけが記載されているケースなど、顧客の意向を十分に把握せず、代理店側の営業上の事情によって特定の商品へ誘導したと評価されるおそれのある記録を、優先的に確認する運用が考えられます。
システム
記録項目が増えた場合、手作業による運用では、入力漏れ、記載のばらつき、更新忘れなどが生じる可能性があります。自社の取扱件数や点検体制を踏まえ、現在の運用で十分に管理できるかを確認する必要があります。意向把握から比較推奨、記録までを一元的に管理するシステムや、音声認識AI・生成AIを記録作成の補助に利用する方法も、対応策の一つとして考えられます。
対応チェックリスト20項目
7つの領域を横断する形で、自己点検にそのまま使えるチェックリストをまとめました。各項目には、性質の異なる3種類のタグを付けています。法令・監督指針にもとづく確認事項と、社内管理上の推奨事項、効率化の選択肢を混同しないようご注意ください。
1面談
- 01社内商品を先に決めて説明を進めるのではなく、顧客が重視する保障・補償内容や条件を確認したうえで、商品を提示する流れになっているか
- 02法令顧客が「お任せします」と答えた場合でも、保障・補償内容、保険料、保険期間などの選択肢を示し、顧客が重視する事項を具体化しているか
- 03法令提案する民間保険と関連する公的保険制度について、顧客が保障の必要性を判断するために必要な情報を適切に提供しているか
2意向把握
- 04法令当初の意向と、商品説明などを通じて変化した最終的な意向を確認・記録できる様式または運用になっているか
- 05社内既契約の有無・内容(保障の重複・不足)を確認する項目があるか
- 06社内保険料と保障内容のどちらを重視するか、優先順位を確認しているか
- 07法令商品説明などを通じて意向が変化した場合、その経緯を確認・記録できているか
3比較推奨
- 08法令保険会社との取引関係や代理店の経営方針など、顧客の意向と直接関係しない事情だけを商品の推奨理由としていないか
- 09法令比較・選別の対象とした商品の範囲と、その中から商品を絞り込んだ理由を説明できるか。その理由が、顧客の重視する保険料、保障・補償内容、支払条件、告知項目などと結びついているか
- 10社内トークスクリプトや提案資料が、顧客の意向を起点に商品を選別・推奨し、その理由を説明できる構成になっているか
4記録
- 11社内意向把握から比較推奨理由の説明までの一連のプロセスを、担当者ごとにばらつきなく記録できているか
- 12社内自社および所属保険会社が定めた記録項目に基づき、面談日時、募集方法、顧客の意向、比較・選別した商品の範囲、推奨理由、最終意向の確認結果などを、必要な範囲で記録できているか
- 13社内比較推奨販売の実施状況を自己点検や社内監査等で確認できるよう、必要な記録を検索・確認できる状態で管理しているか
5教育
- 14社内顧客の意向と結びつかない推奨理由や、代理店側の事情だけによる説明例を教材化し、見直しが必要な表現を周知しているか
- 15社内ロールプレイ等により、顧客の意向を把握し、その意向と商品の推奨理由を結びつけて説明できるかを確認しているか
6点検
- 16社内管理者・コンプライアンス担当者が、記録内容を定期的に点検する体制があるか
- 17社内「意向が不明確なまま推奨理由だけが記載されている」記録を優先的にチェックできているか
7システム
- 18社内現行の紙・Excel運用で、記録の抜け漏れ・入力不備が発生していないか点検したか
- 19効率化現在の取扱件数や記録・点検体制を踏まえ、意向把握、比較推奨、記録を一元管理するシステムが必要かを検討したか
- 20効率化AI・音声認識ツールを導入する場合、AIの出力を必ず担当者が確認・修正してから確定させる運用になっているか
チェックリストの使い方
まずは既存の募集プロセスと記録を確認し、意向把握、商品選別、推奨理由の説明、最終意向確認のどこに不足があるかを整理することが有効です。そのうえで、記録様式、教育、点検、システムの順に、自社の課題に応じて対応を進めます。システム・AIに関する項目(19・20)は法令対応そのものではなく、記録の実効性や効率化を高めるための選択肢として位置づけてください。
意向把握の確認事項・NG事例、比較推奨理由の記載例、募集品質の考え方は、それぞれ関連記事「意向把握とは?保険募集で求められるポイントを解説」「比較推奨理由の書き方【記載例付き】」「募集品質とは何か?金融庁が重視するポイント」で詳しく解説しています。
本記事はINSURANCE JOURNAL編集部による取材・調査・分析をもとに構成しています。