特集 解説

自賠責、11月1日から平均6.2%引き上げ 保険料だけではない「差額精算」とOne-JIBAIで確認したいこと

自賠責、11月1日から平均6.2%引き上げ 保険料だけではない「差額精算」とOne-JIBAIで確認したいこと

2026年11月1日から、自賠責保険の基準料率が改定される。損害保険料率算出機構が4月30日に金融庁へ届け出た新たな基準料率は、全車種等の平均で6.2%の引き上げとなる。新料率は11月1日以降に保険期間が始まる契約へ適用される。

目次
  1. 自家用乗用車24か月は17,650円から18,560円へ
  2. なぜ今回、保険料を引き上げるのか
  3. 純保険料だけでなく、社費も上昇
  4. 「平均6.2%」だけを案内しない
  5. 見落としたくない「差額精算」
  6. 「追加徴収」だけとは限らない
  7. One-JIBAIでも差額精算の手続きが始まっている
  8. One-JIBAIは今回の値上げのためのシステムではない
  9. PDF証明書は「スマホで見られる」だけではない
  10. 契約変更後は「最新版」を保存する
  11. 運輸支局ではPDF画面だけでは足りない場合がある
  12. 11月1日までに代理店が確認したい7項目
  13. 「910円上がる」で終わらせない

2026年11月1日から、自賠責保険の基準料率が改定される。

損害保険料率算出機構が4月30日に金融庁へ届け出た新たな基準料率は、全車種等の平均で6.2%の引き上げとなる。新料率は11月1日以降に保険期間が始まる契約へ適用される。金融庁

ただし、「11月からすべての自賠責保険料が6.2%上がる」と理解するのは正確ではない。

6.2%はあくまで全車種等の平均だ。実際の改定率は車種や保険期間などによって異なる。

さらに代理店実務では、新しい保険料を案内するだけでは済まないケースもある。

すでに旧保険料で手続きを済ませている一部の11月1日以降始期契約では、改定後保険料との差額精算が必要になる場合がある。

同時に、自賠責の業界共同システム「One-JIBAI」の利用も広がっている。

11月1日を前に確認しておきたいのは、保険料の変更だけではない。


自家用乗用車24か月は17,650円から18,560円へ

離島以外の地域(沖縄県を除く)について、損害保険料率算出機構が示した代表的な24か月契約を見ると、自家用乗用自動車は17,650円から18,560円となる。

差額は910円で、改定率は5.2%だ。

軽自動車(検査対象車)は17,540円から18,660円へ1,120円上がり、改定率は6.4%。一般原動機付自転車は8,560円から9,630円となり、12.5%の引き上げとなる。損害保険料率算出機構

車種・24か月契約現行11月1日以降差額改定率
自家用乗用自動車17,650円18,560円+910円+5.2%
軽自動車(検査対象車)17,540円18,660円+1,120円+6.4%
一般原動機付自転車8,560円9,630円+1,070円+12.5%
自家用小型貨物自動車20,340円21,430円+1,090円+5.4%

36か月契約でも改定率は異なる。

自家用乗用自動車は23,690円から24,690円へ4.2%、軽自動車は23,520円から24,830円へ5.6%、一般原動機付自転車は10,170円から11,480円へ12.9%の引き上げとなる。損害保険料率算出機構

顧客へ説明するときには、

「自賠責全体では平均6.2%の引き上げですが、お客さまの契約では○円から○円になります」

と、対象契約の実額を示した方が分かりやすい。


なぜ今回、保険料を引き上げるのか

今回の改定を理解するには、2023年4月の前回改定まで遡る必要がある。

現在の純保険料率は、2022年度末に見込まれた滞留資金7,239億円を、2023年度から2027年度までの5年間で契約者へ還元することを前提として設定された。

その結果、予定損害率は133.5%となった。

損害率とは「支払保険金÷収入純保険料」であり、100%を超えるということは、収入純保険料を上回る保険金支払いを、過去に蓄積された滞留資金を取り崩しながら賄う設計だったということだ。金融庁

その後、事故率は減少傾向にあるものの下げ止まりつつあり、医療費の増加などによって保険金の支払単価も上昇している。

このため保険金支払額はなお減少しているものの、減少ペースは緩やかになった。

一方、滞留資金は2022年度末の約7,240億円から、2025年度末には約5,215億円まで減少する見込みとなった。金融庁は、現在の水準のままでは将来の保険金支払いを賄えないとして、2026年11月から収入と支出が見合う料率水準へ改定する方向を示した。金融庁


純保険料だけでなく、社費も上昇

今回の改定要因は、保険金支払いだけではない。

4月30日の自動車損害賠償責任保険審議会では、現行純保険料率の損害率見込みや滞留資金の活用を再計算した結果、純保険料率について3.3%の引き上げが必要とされた。

さらに、賃金・物価上昇などを背景とした事業費の増加により、社費は12.9%の引き上げが必要とされた。

代理店手数料についても、賃金・物価の上昇を踏まえた調整が行われている。

こうした要素を合わせ、新たな基準料率は全車種等平均6.2%の引き上げとなった。金融庁

つまり今回の改定は、

「事故件数が増えたから6.2%値上げする」

という単純なものではない。

これまで保険料負担を抑えるために活用してきた滞留資金の減少、保険金支払単価、物価・賃金、保険制度を運営するための経費などを総合して見直した結果だ。

「平均6.2%」だけを案内しない

今回、代理店で特に注意したいのが「6.2%」という数字の扱いだ。

自家用乗用車の24か月契約は5.2%、軽自動車は6.4%、一般原付は12.5%。

同じ自家用乗用車でも36か月なら4.2%だ。

損害保険料率算出機構も、改定率は車種や保険期間などの契約条件によって異なると明記している。損害保険料率算出機構

Webサイトや店頭掲示などで、

「自賠責が6.2%値上げ」

だけを大きく表示すると、顧客自身の契約も6.2%上がると受け取られる可能性がある。

**「全車種等平均6.2%」**という表現を崩さないことが重要だ。


見落としたくない「差額精算」

今回の料率改定でもう一つ確認しておきたいのが、改定前に契約手続きが行われた一部契約の差額精算だ。

自賠責保険では、保険期間が始まる前に契約を締結することがある。

自賠責保険普通保険約款第12条では、契約成立後、保険期間が始まる前にその契約に対応する保険料が変更された場合、変更前と変更後の保険料の差額を返還または請求する仕組みとなっている。aioinissaydowa.co.jp

例えば東京海上日動は、11月1日以降始期契約について8月1日から新保険料による取扱いを開始した。

それ以前に、11月1日以降始期の契約を旧保険料で手続きした場合には、改定後保険料との差額精算が必要になる場合があるとしている。

対象顧客には11月末から順次案内を送る予定で、差額精算によって補償内容や保険期間が変わるものではなく、自賠責保険証明書の交換・再発行も不要としている。東京海上日動火災保険


「追加徴収」だけとは限らない

差額精算というと、値上げ分を追加で支払う手続きだけを想像しやすい。

しかし、契約条件によっては返還保険料が発生する場合もある。

あいおいニッセイ同和損保は、11月1日以降始期の一部契約について、「追加保険料の請求または返還保険料の支払い」が発生すると案内している。

三井住友海上も、一部契約について追加保険料の払い込みまたは保険料の返還が必要になる場合があるとしている。aioinissaydowa.co.jp

したがって代理店では、

「11月1日以降始期なら全契約で追加徴収」

と考えないことが重要だ。

対象契約の条件、顧客への通知方法、精算方法、代理店側で必要となる対応は保険会社によって異なるため、取扱各社の案内を確認しておきたい。


One-JIBAIでも差額精算の手続きが始まっている

差額精算と関連して確認しておきたいのがOne-JIBAIだ。

例えば、あいおいニッセイ同和損保では、対象契約についてOne-JIBAI上で差額精算手続きを行える。

追加保険料が発生する場合にはクレジットカードで支払い、返還保険料がある場合には振込先口座を登録する仕組みだ。aioinissaydowa.co.jp

三井住友海上も、One-JIBAIによる追加保険料の払い込みまたは返還手続きを案内している。三井住友海上

ただし、これは各社の具体的な運用例である。

One-JIBAIを利用しているすべての会社で、差額精算の対象条件や顧客導線が完全に同じとは限らない。

代理店側では、自社が扱う保険会社ごとの案内を確認しておく必要がある。


One-JIBAIは今回の値上げのためのシステムではない

One-JIBAIそのものは、今回の料率改定に合わせて導入された仕組みではない。

日本損害保険協会と損害保険会社・共済団体11社は2025年1月21日、自賠責の引受・契約管理業務を共同化する業界共通システムとしてOne-JIBAIの利用を開始した。日本損害保険協会|SONPO

One-JIBAIにより、自賠責に関する非対面手続き、保険料などのキャッシュレス払い、自賠責保険証明書のPDFデータ交付などが可能になっている。日本損害保険協会|SONPO

2026年10月時点で、日本損害保険協会のページに掲載されている利用会社・共済団体は14社・団体まで増えている。日本損害保険協会|SONPO

したがって、

料率改定とOne-JIBAIによるデジタル化は別の取り組み

として整理する必要がある。

ただし、代理店の実務では、この二つへの対応が同じ時期に重なる。

そこが今回確認しておきたいポイントだ。


PDF証明書は「スマホで見られる」だけではない

One-JIBAIでは、自賠責保険証明書をPDFデータで受け取ることもできる。

PDF証明書によって自動車を運行する場合、その証明書を保存したスマートフォンなどの端末を携行する必要がある。

端末画面にPDF証明書を表示して提示した場合、紙の証明書による提示と同等に扱われる。日本損害保険協会|SONPO

ただし、利用時にはいくつか注意点がある。

損保協会は、PDF証明書を保存した端末のバッテリー残量に注意することや、複数端末へ保存するなど、求められた際にすぐ提示できる状態を確保するよう案内している。

また、契約者本人がPDFを保存していても、家族など別の人がそのデータを持たずに対象車両を運転した場合には、備付義務違反となる可能性があるとしている。日本損害保険協会|SONPO

代理店でPDF交付を案内するときは、

「スマートフォンで証明書を受け取れます」

だけではなく、

誰が車を運転する場合でも、対象車両に証明書を備え付けられる状態にしておく必要がある

ことまで説明しておきたい。


契約変更後は「最新版」を保存する

PDF証明書でもう一つ重要なのが、契約内容を変更した後の取扱いだ。

日本損害保険協会は、最新ではない証明書は証明書として使用できないとしている。

変更後には最新データを保存し、古い証明書や契約期間が終了した証明書は適宜削除・廃棄するよう案内している。日本損害保険協会|SONPO

紙の証明書であれば、新しい書類と古い書類を物理的に区別しやすい。

PDFでは端末内に複数ファイルが残る可能性があるため、

「変更後は最新版へ入れ替える」

という説明も必要になる。


運輸支局ではPDF画面だけでは足りない場合がある

PDF証明書について、特に誤解を避けたいのが運輸支局での取扱いだ。

通常の提示では、スマートフォンなどの画面に表示したPDF証明書は紙の証明書と同等に扱われる。

一方、運輸支局の窓口で自賠責証明書として認められるのは紙証明書の提示とされている。

ただし、自賠責データが登録情報処理機関へ報告されている場合には、運輸支局窓口での自賠責証明書の提示そのものを省略できる。日本損害保険協会|SONPO

また、整備工場の体制によってはデータまたは紙の提出が必要になる場合もある。

したがって、

「PDFになったので、どの手続きでも紙は一切不要」

と一律に案内するのは避けたい。


11月1日までに代理店が確認したい7項目

今回の改定を前に、代理店側では少なくとも次の点を確認しておきたい。

  • 取扱各社の新保険料が代理店システムや店頭料金表へ正しく反映されているか
  • 「平均6.2%」ではなく、主要車種・保険期間ごとの実額を説明できるか
  • 11月1日以降始期で旧保険料により手続き済みの対象契約がないか
  • 差額精算の対象抽出、顧客案内、精算状況の確認を誰が担当するか
  • 取扱各社におけるOne-JIBAIの利用範囲と顧客の手続方法を把握しているか
  • PDF証明書の備付・提示方法を顧客へ正確に案内できるか
  • 契約変更後は最新のPDF証明書を保存するよう案内できるか

特に自賠責を大量に扱う自動車販売店や整備工場では、保険料表を差し替えるだけで11月1日対応を完了としない方がよい。


「910円上がる」で終わらせない

自家用乗用自動車の24か月契約では、今回の改定による差額は910円だ。

顧客への説明だけを考えれば、

「17,650円から18,560円になります」

で終わる場面もあるだろう。

一方、代理店側ではその裏側に確認すべき業務がある。

平均6.2%と個別契約の改定率を混同しない。

値上げ理由を「事故が増えたから」と単純化しない。

旧保険料で手続き済みの契約について、差額精算の対象を漏らさない。

One-JIBAIを利用する場合には、自社の取扱会社でどの手続きまで利用できるかを把握する。

PDF証明書を選ぶ顧客には、備付、提示、最新版の管理方法まで伝える。

11月1日に変わるのは保険料だ。

しかし代理店実務で確認すべきなのは、保険料だけではない。

今回の改定を機に、契約手続きから差額精算、証明書の交付・管理まで、自賠責の業務フロー全体を一度点検しておきたい。






一次資料

損害保険料率算出機構は、2026年4月30日に新基準料率を届け出ており、11月1日以降始期契約に適用する。全車種等平均の改定率は6.2%で、車種・保険期間別の金額も公表されている。損害保険料率算出機構

金融庁の自動車損害賠償責任保険審議会資料では、2023年改定時の滞留資金7,239億円の活用、予定損害率133.5%、現在の滞留資金の減少、純保険料・社費の再計算など、今回の改定に至った背景を確認できる。金融庁

差額精算については、東京海上日動、あいおいニッセイ同和損保、三井住友海上などが対象契約や手続方法を案内している。実際の対象や顧客対応は取扱保険会社ごとに確認したい。東京海上日動火災保険

One-JIBAIとPDF証明書については、日本損害保険協会が利用会社・団体、備付・提示、変更後の証明書管理などを案内している。

本記事はINSURANCE JOURNAL編集部による解説・分析です。制度・商品の詳細は公式発表をご確認ください。

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