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本人確認書類の画像送信、2027年4月に原則廃止 金融庁がICチップ読取への早期移行を要請、代理店が確かめたい6項目

本人確認書類の画像送信、2027年4月に原則廃止 金融庁がICチップ読取への早期移行を要請、代理店が確かめたい6項目

金融庁は2026年10月9日、金融機関等に対し、非対面での本人確認方法について、2027年4月1日の制度変更を待たず、ICチップ情報の読み取りを利用する方式への速やかな移行を求めた。本人確認書類の画像を送信する従来の方式は、同日から原則として廃止される。今回の制度変更は非対面だけでなく、対面での本人確認方法にも及ぶ。ただし、すべての保険契約や保全手続で一律にICチップの読み取りが必要になるわけではない。制度の対象範囲と、保険代理店が実務上確認しておきたい事項を整理する。

目次
  1. 金融庁が求めた3つの対応
  2. 2027年4月1日、本人確認の何が変わるのか
  3. 保険のネット申込・保全手続は、すべて対象なのか
  4. 「マイナンバーカードがないと契約できない」は正しくない
  5. 施行日をまたぐ手続はどうなるのか
  6. 代理店が確認しておきたい6項目
  7. 外部サービス経由の漏えい事案も、別の観点から確認したい
  8. INSURANCE JOURNAL VIEW|本人確認の変更は、募集人の説明と事務管理の問題でもある

金融庁が求めた3つの対応

2026年10月9日、金融庁は「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」と題する注意喚起を公表した。

背景にあるのは、インターネット上に公開された顧客向けサービスや業務システムへの不正アクセスの増加だ。金融庁は、運転免許証などの本人確認書類の画像を含む顧客情報が漏えいする事案が発生していることを挙げている。

注意喚起で金融機関等に求めた対応は、大きく3つに分かれる。

第一は、サイバーセキュリティ対策の点検だ。

外部事業者に起因するリスクの管理(サードパーティリスク管理)や、インシデント発生時の対応態勢を含め、現状の対策を点検するよう求めた。不十分な点があれば、リスクに応じて必要な措置を速やかに講じるとしている。

第二は、非対面での本人確認の徹底だ。

本人確認書類の画像や顧客の容貌の画像について、不自然な点がないかを改めて確認するよう求めた。画像を使った本人確認が引き続き行われる移行期間においても、なりすまし対策を緩めないという趣旨である。

第三は、ICチップ情報の読み取りを利用する方式への早期移行だ。

犯罪収益移転防止法施行規則の改正により、2027年4月1日から本人確認書類の画像送信を受ける方法が原則廃止されることを踏まえ、施行日を待たずに対応するよう求めた。

ここで区別したいのは、2027年4月1日という法令の施行日と、金融機関等に求められている対応時期である。

今回の注意喚起によって施行日が前倒しされたわけではない。金融庁が求めたのは、既に決まっている制度変更への対応を早めることだ。

出典:金融庁「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」(2026年10月9日)

2027年4月1日、本人確認の何が変わるのか

今回の変更の根拠となる犯罪収益移転防止法施行規則の改正は、2025年6月24日に公布されている。

改正の主な目的は、偽造・変造された本人確認書類を使ったなりすましを防ぐことにある。

従来の非対面での本人確認では、運転免許証などをスマートフォンで撮影し、本人の顔画像とともに送信する方式が利用されてきた。一般に「eKYC」と呼ばれるオンライン本人確認の一方式である。

しかし、書類の画像だけでは偽変造への対応に限界がある。このため改正後は、本人確認書類のICチップ情報を利用する方式などが中心となる。

主な本人確認方法の変更

確認方法2027年4月1日以降の扱い
本人確認書類の画像と本人の顔画像を送信する方式犯罪収益移転防止法に基づく当該方式は廃止
本人確認書類のICチップ情報と本人の顔画像を送信する方式存置
マイナンバーカードの公的個人認証を利用する方式存置
一定の本人確認書類の原本送付と転送不要郵便を組み合わせる方式条件付きで存置
対面で対象のICチップ付き本人確認書類を提示する方式ICチップ情報の読み取りが必要

※警察庁の改正内容に基づき、主要な方法を抜粋して整理。法令には対象者や取引による例外、補完措置がある。

ここで注意したいのは、「本人確認書類の画像送信方式が廃止される」ということと、「本人確認書類を画像として取り扱うことが一切禁止される」ということは同じではない点だ。

今回の改正は、犯罪収益移転防止法に基づく本人特定事項の確認方法を見直すものだ。保険会社が別の目的や根拠で書類の画像を求める手続まで、すべて一律に禁止するものではない。

対面での本人確認も変更される

見落としたくないのが、今回の改正には対面での本人確認方法の見直しも含まれていることだ。

警察庁の公表資料では、写真付き本人確認書類の提示を受ける従来の方法について、対象書類を原則としてICチップ付きのものに限定し、そのICチップ情報の読み取りを必須とすることが示されている。

つまり、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認で対象の本人確認書類を対面提示してもらう場合、2027年4月1日以降は、単に書類の券面を目視確認するだけでは足りない場面が生じる。

ただし、これはすべての対面の保険募集でICチップ読み取りが義務付けられるという意味ではない。取引時確認の対象となる取引かどうか、どの本人確認方法を用いるかによって扱いは異なる。

出典:警察庁「JAFIC年次報告書2025」特集2・犯罪収益移転防止法施行規則の改正による本人確認方法の見直し

保険のネット申込・保全手続は、すべて対象なのか

保険募集の現場では、この点を最初に整理しておく必要がある。

犯罪収益移転防止法では、取引時確認が必要となる取引が定められている。非対面で行うという理由だけで、すべての保険手続が一律に対象になるわけではない。

生命保険協会と日本損害保険協会が公表している案内を確認すると、取引時確認が必要となる場面には違いがある。

生命保険の場合

生命保険協会は、取引時確認が必要となる取引として、生命保険契約の締結、契約者貸付、契約者変更、満期保険金・年金・解約返戻金の支払いなどを挙げている。

ただし、対象外となる商品や取引もあるとしており、個別の取り扱いは各保険会社への確認が必要だ。

損害保険の場合

日本損害保険協会は、積立保険の契約締結、満期返戻金・解約返戻金の受取り、契約者変更などを挙げている。このほか、現金・一定の小切手による200万円を超える取引や、マネー・ローンダリングの疑いがある取引なども対象となる。

したがって、例えば一般的な自動車保険のネット申込について、今回の法改正を根拠に、2027年4月から一律にICチップによる本人確認が必須になるとはいえない。

一方、犯罪収益移転防止法の取引時確認とは別に、保険会社が不正防止や手続上の必要性から本人確認を行っている場合もある。

募集人が確認したいのは、単に「その保険会社がICチップ読取を導入するか」ではない。

どの商品・どの手続で、何を根拠として、どの本人確認方法を使うのか。

この区別が必要になる。

参考:

「マイナンバーカードがないと契約できない」は正しくない

制度変更について顧客に説明する際、誤解を招きやすいのが利用できる本人確認書類の種類だ。

金融庁はICチップ情報の読み取りへの原則一本化を求めているが、これはマイナンバーカード以外の本人確認書類をすべて認めなくなるという意味ではない。

警察庁の改正内容では、ICチップ付きの運転免許証や在留カードなどを利用する方法が存置されている。

また、マイナンバーカードの公的個人認証を利用する方式も残る。

ICチップ情報と顔画像を組み合わせる方式と、公的個人認証を利用する方式は、本人確認の仕組みが異なる。すべての方式で顔画像の撮影が必要になるわけではない。

さらに、ICチップ付きの本人確認書類や読み取りに対応する機器を保有していない人に対する補完措置も用意されている。

例えば、偽造防止措置が講じられた一定の本人確認書類の原本を送付し、取引関係文書を転送不要郵便で送付する方法などである。

ただし、こうした方法が法令上残ることと、すべての保険会社がすべての手続でその方法を提供することは別だ。

募集人は、利用可能な書類と代替手段について、取扱保険会社が実際に用意する手続を確認して案内する必要がある。

出典:警察庁「令和7年改正犯罪収益移転防止法施行規則に関するQ&A(なりすまし等のリスクの高い本人特定事項の確認方法の廃止等)」

施行日をまたぐ手続はどうなるのか

2027年4月1日の施行日が近づくにつれ、実務上問題になり得るのが、本人確認の途中で施行日を迎えるケースだ。

この点について、警察庁のQ&Aには参考となる説明がある。

施行前に本人確認が完了している場合

施行前に、改正によって廃止される方法で適切に本人確認を完了した取引について、改正後に別の方法で一律に再確認することは求めていない。

例えば、施行前に所定の本人確認を済ませた顧客に対し、2027年4月1日になったという理由だけで、すべて再確認しなければならないわけではない。

もっとも、その後の取引内容やリスク等によって別途確認が必要になる場合はある。

施行前に発送し、施行後に書類が届く場合

注意したいのは、施行前に顧客が本人確認書類の写しを発送し、事業者が施行後に受領するケースだ。

警察庁は、この場合、改正後の規則に基づく別の方法で改めて本人特定事項を確認する必要があると説明している。

顧客が書類を発送した日だけではなく、確認を行う事業者がいつ受領し、どの方法で確認を完了するかが問題になる。

保険会社が独自に定める申込受付日や契約成立日などの基準と混同しないようにしたい。

これらの経過的な取り扱いは、代理店が個別に判断するのではなく、各保険会社の手続案内で具体的に確認する必要がある。

代理店が確認しておきたい6項目

ここからは、制度変更と金融庁の注意喚起を踏まえ、募集人と代理店管理者が実務上確認しておきたい事項を整理する。

以下は金融庁が代理店向けに指定した点検項目ではなく、公開資料に基づいて本誌が整理したものだ。

1.取扱保険会社ごとに、対象となる取引を整理したか

最初に確認したいのは、取引時確認が必要となる商品・手続の範囲だ。

生命保険の新契約、契約者変更、契約者貸付、解約返戻金の支払いなど、取扱保険会社がどの手続で犯収法に基づく取引時確認を実施しているかを確認する。

損害保険についても、積立保険等の対象取引を整理する。

そのうえで、各保険会社が独自に本人確認を行う手続を分けて把握しておく。

確認事項: 対象商品、対象手続、取引時確認の要否、現在の本人確認方法。

2.対面・非対面それぞれの変更時期を把握したか

制度上の施行日は2027年4月1日だが、金融庁は施行日前の移行を求めている。

そのため、保険会社によっては施行日以前に新しい本人確認方法へ切り替えることもあり得る。

代理店が確認したいのは、具体的な適用開始日、対象となる手続、必要な書類や機器、募集人が行う作業の範囲だ。

特に対面の取引時確認については、今後どの方法でICチップ情報を読み取るのか、保険会社側で用意する仕組みを確認しておきたい。

確認事項: 切替開始日、対面・非対面の変更内容、代理店向け案内、問い合わせ窓口。

3.募集人が顧客に変更理由を説明できるか

ICチップの読み取りが求められた顧客から、これまでの方法ではなぜ駄目なのかと質問されることは想定しておきたい。

説明の中心となるのは、本人確認書類の偽造・変造によるなりすましを防ぐため、国が確認方法を見直したという事実だ。

一方、すべての顧客にマイナンバーカードが必要だと説明するのは正しくない。

使用可能な書類や確認方法は、保険会社の案内に基づいて伝える必要がある。

確認事項: 変更理由、利用可能な本人確認書類、操作方法、本人確認の完了条件。

4.ICチップを読み取れない顧客への対応経路はあるか

ICチップ付きの本人確認書類がない場合だけでなく、書類は持っているものの、利用する機器や読み取り環境が整っていない場合も考慮したい。

警察庁は、ICチップ付き書類や対応機器を持たない人などに対する補完措置を規定している。

代理店では、各保険会社が用意する代替手続と、そこに要する時間を確認しておくことが重要だ。

確認事項: 代替書類、郵送・対面等への切替方法、所要日数、顧客サポート窓口。

特に保険契約の更新や払込みなど期日がある手続では、代替経路の確認が遅れると顧客対応に支障が生じる可能性がある。

5.施行日前後の処理中案件について取り扱いを確認したか

施行日までに本人確認が完了している案件と、施行日をまたいで確認が完了する案件は区別する必要がある。

警察庁のQ&Aでは、施行前に所定の確認を済ませた顧客について、改正だけを理由に再確認することは求めていない。

一方、廃止される方式で利用する書類の写しを施行前に発送しても、事業者の受領が施行後となる場合は、別の方法による確認が必要になる。

代理店では、各社から示される移行期間の取り扱いを把握し、処理中案件を適切に案内できるようにしておきたい。

確認事項: 本人確認の完了時点、施行日をまたぐ案件、再提出の要否、保険会社の経過対応。

6.本人確認書類の画像と外部サービスの管理を点検したか

金融庁の注意喚起が本人確認方法の見直しと並べて求めたのが、サイバーセキュリティ対策とサードパーティリスク管理の点検だ。

代理店が顧客から本人確認書類の画像や写しを受け取る場面があるなら、その保管先を確認しておきたい。

メール、チャット、共有フォルダ、顧客管理システムなどに、必要性を確認していない画像が残っていないか。誰が閲覧できるか。保存期間や削除方法は適切か。

外部の問い合わせ管理サービスや顧客管理サービスを使っている場合には、保存される顧客情報の項目、管理権限、事故発生時の連絡経路も把握しておきたい。

ただし、保存が法令上必要な本人確認記録などまで一律に削除することは適切ではない。保険会社の代理店向けルールや法令上の保存要件に沿って確認する必要がある。

確認事項: 書類の保存場所、閲覧権限、保存・削除ルール、外部サービスの利用状況、事故時の連絡経路。

外部サービス経由の漏えい事案も、別の観点から確認したい

2026年10月8日、オリックス生命は、業務委託先のスカラコミュニケーションズへの不正アクセスによって、顧客情報が漏えいした可能性があると公表した。

10月8日付の同社資料によると、対象は約26,500件。同じ顧客による複数回の問い合わせを含む件数であり、実人数ではない。

対象となる情報には氏名、住所、電話番号、メールアドレス、証券番号、問い合わせ内容などが含まれ、問い合わせ内容には顧客が申告した医療情報等も含まれていた。

同社は、自社システムへの不正アクセスは確認されていないとしている。

この事案は、今回の本人確認書類の画像送信方式の廃止とは区別して考える必要がある。オリックス生命の公表資料は本人確認書類の画像を漏えい対象として挙げておらず、金融庁も10月9日の注意喚起で同社の事案を名指ししていない。

ただし、外部サービスを通じて顧客情報を取り扱う場合のリスクを確認する事例にはなる。

出典:オリックス生命「当社の委託先における個人情報漏えいの可能性について」(2026年10月8日付公表資料)

関連記事:INSURANCE JOURNAL「損保ジャパン『SMILING ROAD』、問い合わせ情報約6万件で漏えいの可能性」

INSURANCE JOURNAL VIEW|本人確認の変更は、募集人の説明と事務管理の問題でもある

今回の制度変更で代理店が最も注意したいのは、すべての本人確認が一斉に同じ方法へ切り替わると考えないことだ。

犯罪収益移転防止法による取引時確認が必要な取引と、保険会社が独自に本人確認を求める取引は異なる。また、対面と非対面では、使える確認方法や必要な対応も同じではない。

制度上の施行日は2027年4月1日であっても、保険会社のシステムや運用がそれ以前に変更される可能性がある。

募集人には、その変更を顧客に説明し、利用できる本人確認方法を案内する役割がある。一方、代理店管理者には、取扱保険会社ごとの手続を把握し、顧客情報の取り扱いを確認する役割がある。

まずは取扱件数の多い保険会社について、新契約と主な保全手続の本人確認方法を一覧化しておきたい。

確認した日付、保険会社からの回答、切替予定、代替手続を記録しておけば、各社の運用変更が公表されたときにも更新しやすい。

本人確認の厳格化は、顧客の手間を増やすためのものではない。なりすましや不正利用を防ぐための制度変更だ。

その目的と実際の手続を、顧客に過不足なく伝えられるか。そこが保険募集の現場で問われることになる。

参考資料

※2026年10月19日時点で確認できた公表資料に基づく。制度上の確認方法と、各保険会社が実際に提供する手続は必ずしも一致しない。実務での適用対象、切替日、本人確認の方法は、各社の最新の案内による。

情報源

本記事はINSURANCE JOURNAL編集部による解説・分析です。制度・商品の詳細は公式発表をご確認ください。

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