復職できても、 収入はすぐには戻らない ー就業不能状態から回復した後も給付が続く保険をどう見るか
病気やケガで長期間働けなくなったとき、家計を支える選択肢の一つが就業不能保険です。ただし、「働けない期間に給付を受け取れる」という説明だけでは、商品の違いを十分に伝えたことにはなりません。就業不能状態から回復し、仕事に戻れたとしても、すぐに以前と同じ収入へ戻れるとは限りません。
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病気やケガで長期間働けなくなったとき、家計を支える選択肢の一つが就業不能保険です。ただし、「働けない期間に給付を受け取れる」という説明だけでは、商品の違いを十分に伝えたことにはなりません。
就業不能状態から回復し、仕事に戻れたとしても、すぐに以前と同じ収入へ戻れるとは限りません。時短勤務、職務変更、配置転換、治療との両立などによって、復職後も収入減少が続くケースがあります。
今回は、就業不能状態から回復した後も給付が継続するタイプの特徴を整理し、相談時にどこを比較すべきかを考えます。
就業不能保険は、受取期間で大きく2つに分かれる
就業不能保険は、給付金の受取期間に注目すると、大きく二つのタイプに分けられます。
就業不能状態の期間だけ受け取るタイプ
所定の就業不能状態が続いている間に限って給付されます。回復して支払要件を満たさなくなると、給付も終了します。
回復後も継続して受け取るタイプ
一度所定の支払事由に該当すると、その後の就業状態にかかわらず、契約で定めた期間や保険期間満了まで給付が続きます。
どちらが適しているかは、保険料、保障額、家計状況、勤務先の福利厚生などによって異なります。単純に給付期間が長い商品ほど優れているとは限りません。
ただし、復職後の収入減少まで考えると、回復後も給付が続く仕組みには明確な意味があります。
「働けるようになった」と「収入が戻った」は別の話
東京海上日動あんしん生命の2020年の調査では、就業不能状態から復職した人のうち、月収が5万円以上減少した人が6割を超えたとされています。
復職できたとしても、治療や通院を続けながら働く場合、以前と同じ勤務時間や業務内容に戻れないことがあります。会社側が配慮して時短勤務や軽い業務へ切り替えることで、収入が下がるケースもあります。
- 時短勤務や勤務日数の減少
- 残業や夜勤ができなくなる
- 役職や職務内容の変更
- 賞与や各種手当の減少
- 再発防止のための就業制限
- フリーランスや自営業者の取引減少
就業不能状態が終われば給付も終了する商品では、この「復職後の収入減」に対応できません。一方、回復後も給付が継続するタイプであれば、生活を立て直すまでの家計を支える役割が期待できます。
給付が続く商品でも、支払事由は同じではない
回復後も給付が継続する商品には共通点があります。一度支払事由に該当した後は、定期的な就業不能状態の申告や休業証明を求めず、所定の期間まで給付を続ける設計が見られます。また、支払事由に該当した後の保険料払込が免除される商品もあります。
ただし、最も重要なのは、「何をもって支払事由に該当するのか」です。商品によって、公的障害等級、身体障害者手帳、要介護認定、所定の日常生活障害状態など、基準が異なります。
回復後も給付が継続する商品例
以下は、原稿作成時点で、所定の支払事由に該当した後、回復後も給付が継続する仕組みを持つ商品例です。商品の優劣を示すものではなく、支払要件の違いを理解するための例として整理します。
くらしの応援ほけんWセレクト
介護・障害・就労不能年金の支払事由として、複数の公的認定や所定状態が設定されています。
- 身体障害者手帳の1級から4級に該当
- 国民年金法の障害等級1級または2級に認定
- 公的介護保険の要介護1以上に認定
- 65歳未満で、所定の日常生活介護状態が180日以上継続
- 精神障害者保健福祉手帳の1級に認定
くらすプラスZ
長期収入サポート月額給付金の支払事由として、所定の高度障害状態、事故による身体障害、障害基礎年金の受給権発生などが設定されています。
- 病気やケガによる所定の高度障害状態
- 不慮の事故による所定の身体障害状態
- 障害等級1級または2級に認定され、障害基礎年金の受給権が発生
- 精神障害については所定の1級認定
あんしん就業不能保障保険
就業不能保険金の支払事由として、公的障害認定や要介護状態、所定の生活障害状態などが設定されています。
- 国民年金法の障害等級1級または2級に認定
- 身体障害者手帳の1級から3級に該当
- 所定の特定生活障害状態に該当
- 公的介護保険制度の要介護2以上に認定
- 所定の要介護状態が180日を超えて継続
「働けない」の定義は、想像より狭いことがある
就業不能保険という名称から、「病気やケガで仕事を休めば受け取れる」と考える人もいます。しかし、実際の支払要件はそれほど単純ではありません。
公的障害等級や身体障害者手帳、要介護認定を基準とする商品では、医師から休職を勧められたことや、会社を休んでいることだけでは支払対象にならない場合があります。
反対に、職業や勤務状況ではなく、日常生活動作や公的認定を基準にすることで、復職後も給付を継続しやすい設計ともいえます。ここは商品の特徴であると同時に、誤解が起こりやすい部分です。
相談時には「入口・途中・出口」を確認する
就業不能保障を説明するときは、給付額だけでなく、保障が始まり、続き、終わるまでの流れを確認すると理解しやすくなります。
- 入口:どの状態になれば支払事由に該当するのか
- 途中:定期的な診断書や休業証明の提出が必要か
- 出口:回復、復職、年齢到達など、何をもって給付が終了するのか
このほか、免責期間、精神疾患の取り扱い、妊娠・出産に伴う就業不能、既往症、保険料払込免除、支払回数や通算限度も重要です。
勤務先の制度や公的保障と重ねて考える
会社員であれば、健康保険の傷病手当金を受け取れる可能性があります。勤務先によっては、休職制度、所得補償制度、団体長期障害所得補償保険などが用意されていることもあります。
自営業者やフリーランスは、会社員と比べて傷病手当金の対象にならないケースが多く、就業不能による収入減少が家計へ直接響きやすい傾向があります。
民間保険だけを単独で考えるのではなく、公的保障、勤務先制度、預貯金、配偶者の収入を重ねたうえで、実際に不足する金額を確認することが大切です。
就業不能状態から回復し、仕事に戻れたとしても、収入や働き方が元どおりになるとは限りません。だからこそ、就業不能保障は「休んでいる間の生活費」だけではなく、「復職後の生活をどう立て直すか」という視点で見る必要があります。
相談実務では、給付が続くことだけをメリットとして強調するのではなく、支払事由の厳しさ、保険料、公的保障との重複まで含めて説明することが重要です。何を保障し、何を保障しないのかを具体的に伝えることが、商品への理解と納得につながります。
参考資料
- 東京海上日動あんしん生命「就業不能に関する調査」2020年
- 三井住友海上あいおい生命「くらしの応援ほけんWセレクト」商品情報
- チューリッヒ生命「くらすプラスZ」商品情報
- 東京海上日動あんしん生命「あんしん就業不能保障保険」商品情報
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、商品の推奨や優劣を示すものではありません。商品名、保障内容、支払要件、保険料払込免除、販売状況などは変更される場合があります。検討時には各社の最新の約款、契約概要、注意喚起情報、パンフレットをご確認ください。
本記事は転載元の公式発表をもとに INSURANCE JOURNAL が掲載しています。掲載内容は公開時点の情報に基づきます。