介護には、 何に、いくらかかるのか ー平均額だけでは見えない、在宅介護と施設介護の現実
老後が長くなったからといって、そのすべてを健康な状態で過ごせるとは限りません。年齢が上がるほど、要支援・要介護認定を受ける人の割合は高まり、介護は一部の人だけの問題ではなくなっています。
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老後が長くなったからといって、そのすべてを健康な状態で過ごせるとは限りません。年齢が上がるほど、要支援・要介護認定を受ける人の割合は高まり、介護は一部の人だけの問題ではなくなっています。
厚生労働省などのデータによると、75歳以上では3割以上、85歳以上では6割が要支援・要介護の状態にあります。介護が始まれば、本人の生活だけでなく、家族の時間、働き方、住まい、家計にも影響が及びます。
本記事では、公的介護保険でどこまで負担が抑えられるのか、在宅介護と施設介護で費用がどう変わるのかを整理しながら、相談実務で押さえておきたいポイントを見ていきます。
まず知っておきたい、公的介護保険の仕組み
介護費用を考えるうえで、最初に確認したいのが公的介護保険制度です。40歳以上の被保険者は、一定の条件を満たすことで、介護保険の対象となるサービスを原則1割の自己負担で利用できます。一定以上の所得がある場合は、2割または3割負担になります。
ただし、給付を受ける条件は年齢によって異なります。65歳以上は、要支援・要介護認定を受ければ、原因を問わず制度を利用できます。一方、40歳から64歳までの人は、加齢に伴う16種類の特定疾病が原因である場合に限られます。
- 介護サービスの自己負担は原則1割
- 所得によっては2割または3割負担
- 利用できるサービス量には、要介護度ごとの支給限度額がある
- 限度額を超えた利用分は全額自己負担
- 介護保険の対象外サービスも全額自己負担
自己負担額が一定の上限を超えた場合には、「高額介護サービス費」により超過分が払い戻される仕組みもあります。ただし、これによって介護にかかるすべての費用が抑えられるわけではありません。
公的介護保険があっても、自己負担は残る
介護保険の対象となるサービスであっても、支給限度額を超えて利用した分は全額自己負担です。また、配食、見守り、家事代行、紙おむつ、交通費、住宅改修の一部など、制度の対象外となる費用もあります。
つまり、介護費用は「介護サービスの利用料」だけで決まるものではありません。本人の状態や住環境、家族がどこまで介護を担えるかによって、必要な支出は大きく変わります。
介護費用は「在宅」と「施設」で大きく変わる
介護費用のかかり方は、大きく在宅介護と施設介護の2つに分けられます。生命保険文化センターの「令和6年度 生命保険に関する全国実態調査」では、月々の介護費用の平均は、在宅介護が5万2,000円、施設介護が13万円とされています。
在宅介護
月平均 5万2,000円自宅で生活を続けながら、訪問介護やデイサービスなどを利用する形です。家族が日常的な介護を担うケースも多く、金銭負担だけでなく、時間的・身体的な負担が生じやすい点に注意が必要です。
施設介護
月平均 13万円介護施設に入所し、24時間体制でケアを受ける形です。施設の種類や居室、サービス内容によって費用差が大きく、平均額を上回るケースも少なくありません。
在宅介護では、月々の費用とは別に、介護開始時の初期費用が発生することがあります。住宅の段差解消、手すりの設置、介護ベッドなどの福祉用具購入といった支出です。
同調査では、この一時的な費用の平均は約47万円とされています。介護が始まってから準備する場合、まとまった資金が必要になる可能性があります。
平均期間は4年7カ月。総額はいくらになるのか
介護に要した期間の平均は4年7カ月です。この平均期間と月額費用を単純に組み合わせると、在宅介護と施設介護では、必要となる総額に大きな差が生じます。
=平均約333万円
=平均約715万円
ただし、これらはあくまで平均値です。介護期間が短い人もいれば、10年以上続く人もいます。同調査では、介護期間が10年以上に及ぶケースが全体の14.8%を占めています。
また、当初は在宅介護で対応できていても、認知症の進行や身体機能の低下によって、途中から施設介護へ移行することもあります。その場合、当初の見込みより費用が大きくなる可能性があります。
本当に重いのは、お金だけではない
介護を考える際には、費用だけでなく、家族が介護に費やす時間も見逃せません。通院の付き添い、食事や排泄の介助、各種手続き、ケアマネジャーや施設との連絡など、日常的な負担が積み重なります。
家族が仕事を続けながら介護を担う場合、勤務時間の短縮や休職、離職につながることもあります。表面上の介護費用が抑えられていても、世帯収入の減少まで含めれば、家計への影響はさらに大きくなります。
介護の備えは「平均額を貯めること」では終わらない
介護への備えというと、平均的な費用をもとに貯蓄額や民間保険の保障額を決める発想になりがちです。しかし、介護の実態は家庭ごとに異なります。
相談時には、次のような点を具体的に確認したいところです。
- 本人は在宅介護と施設介護のどちらを希望しているか
- 自宅で介護を続けられる住環境か
- 家族のうち誰が、どこまで介護を担えるか
- 介護によって家族の収入が減る可能性はあるか
- 預貯金、公的年金、民間保険でどこまで対応できるか
- 認知症や要介護度の進行をどこまで想定するか
民間の介護保険を検討する場合も、「介護が不安だから加入する」という説明だけでは十分ではありません。公的介護保険で補える部分と、家計から支出する部分を整理したうえで、不足する資金に対してどのような保障が必要なのかを考える必要があります。
「介護には数百万円かかる」という数字だけでは、相談者は自分ごととして捉えにくいものです。在宅か施設か、どの程度の期間が続くか、家族の働き方がどう変わるか。こうした条件を一つずつ置き換えることで、必要な備えが見えてきます。
介護は、発生時期も期間も要介護度の変化も予測しにくいテーマです。だからこそ、平均値を答えにするのではなく、複数のシナリオを示しながら、家族で考えるきっかけをつくることが、これからの相談実務に求められます。
参考資料
- 厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」令和6年8月審査分
- 総務省「人口推計」2024年8月時点
- 厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
- 生命保険文化センター「令和6年度 生命保険に関する全国実態調査」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。公的介護保険の給付条件、自己負担割合、支給限度額、各種サービスの費用は、所得、要介護度、地域、利用内容などによって異なります。具体的な制度利用については、市区町村や地域包括支援センター、担当の専門職へご確認ください。
本記事は転載元の公式発表をもとに INSURANCE JOURNAL が掲載しています。掲載内容は公開時点の情報に基づきます。